※自分の勉強用で記事を書いています。「こんなこと常識だろ!」とか「なにを今更…」な内容かもしれませんがご容赦ください…
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鉱物には鉱物グループというものがあって、例えばエメラルドとアクアマリンはベリル、ルビーとサファイアはコランダムというようにグループ分けされているものがあります。
今回は鉱物の中でもメジャーで暖かい色味や幾何学的な結晶の形でファンの多いガーネットグループについて書いていきたいと思います。
ガーネットは1月の誕生石としても有名で、ワインのような深い赤が有名な宝石です。
宝石としてのガーネットは6種類あり、
・パイロープ(苦礬ざくろ石)
・アルマンディン(鉄礬ざくろ石)
・アンドラダイト(灰鉄ざくろ石)
・グロッシュラー(灰礬ざくろ石)
・スペサルティン(満礬ざくろ石)
・ウバロバイト(灰クロムざくろ石)
和名には石を構成する元素の名前が付けられており、
苦=マグネシウム
礬=アルミニウム
灰=カルシウム
鉄=鉄
満=マンガン
これらがそれぞれ含まれています。
科学組成が違うと別種の鉱物になることがほとんどですが、ガーネットグループは
X3Y2(SiO4)3
の組成を素地として、XやYのところにマンガンやアルミニウムなどが入りそれぞれの石になります。
ですが構成する元素は違っても全て共通してコロッとした12面体や24面体などになります。
(これを類質同像といいます。)
これがガーネットグループの特徴です。
先に挙げたガーネット6種は赤系統と緑系統があります。
【赤系統(パイラルスパイト系)】
・アルマンディン
・パイロープ
・スペサルティン
【緑系統(ウグランダイト系)】
・アンドラダイト
・グロッシュラー
・ウバロバイト
赤系統にはアルミニウム、緑系統はカルシウムを含んでいます。
それぞれハッとするような鮮やかな赤や、深い緑色を呈しておりウットリするほど美しいです。
各ガーネットは広く宝飾品として使われており、様々な由来や特徴、歴史があります。
●アルマンディン
最も古くから宝飾品として使われてきた歴史がある石です。
そのため「貴柘榴石」という宝石の称号を含む和名を持っています。
深く紫がかった赤色が特徴でヘレニズム期(ミロのヴィーナスなどが造られた時代)に宝石として流通していました。
インド産が多かったらしいですが、遠方の産地のものを使うほど人気があったようです。
その後はガーネット自体の人気は落ちて中世紀にパイロープが発見されるまではほとんど使われなくなりました。
戦前の日本にはアルマンディンのような赤黒いガーネットが主流だったようです。
●パイロープ
同じく赤系統のガーネットですが、こちらはアルマンディンより鮮やかな赤の石です。
ノアの方舟の船内の照明として使った、この石で作った弾丸は当たったものを必ず死に至らしめるなど様々な伝承のある石です。
赤い宝石を指す「カーバンクル(carbuncle)」はもとはこの石のことを指します。
カーバンクルの名前で個人的に印象的なのは探偵小説シャーロック・ホームズシリーズの「青い紅玉(The Adventure of The Blue Carbuncle)」です。
クリスマスのご馳走のために買ったガチョウのお腹から美しい青い宝石が出てきて驚いた男がホームズに相談しに行く話なのですが、事件自体だけでなく宝石自体もなかなか珍奇です。
ガーネット族は様々な色を呈するのですが、深い純粋な青色は発見されていませんでした。
ベキリーブルーガーネットという新種が最近発見され例外となりましたが、アレキサンドライトと同じく光によって赤にも変わるので純粋な青と言えるかは難しいところ…。
なのでこの話に出てきた宝石が真っ青なガーネットなら宝石界、鉱物界を騒がす唯一無二の希少な宝石であることば間違い無いです。
ミステリーと石好きの想像力をビシビシ刺激する良いお話しですね。
閑話休題。
パイロープは地殻を構成する鉱物の一つで、キンバレー岩やカンラン岩などの深成岩に含まれます。その深成岩が地上に露出して風化するとパイロープの塊のみ残り、塊状で産する形になります。
なので結晶になることも大きな塊で産することも少ないです。
●スペサルティン
名前の由来はドイツの地名から。
日本では長野県和田峠で美しい結晶を産することが有名です。
その土地では結晶の形に由来して「菱形石」「緒締石」の名前があり、文字通り結晶に穴を開けて紐を絞めるストッパーとして使いました。
成分上アルマンディンやパイロープと混ざりやすく、赤褐色や赤みがかったオレンジになります。
純粋に近いスペサルティンは鮮やかなオレンジや黄金色で特別な宝石名を持って販売されることがある。
↑★スペサルティンの結晶。2cmくらい。コロコロしていてかわいいです。
●アンドラダイト
花崗岩と接触変成したスカルン鉱床から産するものが代表的ですが、蛇紋岩からも産することがありグロッシュラーと成分が入れ替わったり混じることがあります。
この種類のガーネットからは2種類大変有名なものがあり、宝石や標本として珍重されています。
一つはデマンドイド。
オリーブ色に近い黄緑で、ダイアモンドを上回る光の分散度(波長によって屈折率の違う性質、カット石にすると虹色のキラキラがダイヤより強い)を持つ珍しい石です。
名前もダイヤに由来していて和名もその鮮やかさから「翠柘榴石」といいます。
特にウラル産はマニアにとって人気の石になっています。
もう一つはレインボーガーネット。
名前の通り表面上に虹色の虹彩光を持つガーネットで、発見当時はとても珍しがられ美品は宝石としてカットされています。
虹色の原因は構成する鉄で過剰になったものが酸化鉄状態になり、表面を薄く覆うことで虹色を出しています。(パワーストーンでよくある"アクアオーラクリスタル"も鉄イオンをコーティングしたものなのでアレと同じ輝きですね)
美品で有名な産地はメキシコ、ソノーラ州と奈良県天川村。
メキシコは取れなくなったので現在は奈良県のものが宝石でも標本でも主流です。
↑★母岩付きデマントイド。低品質ですが特徴的な色と結晶の形ははっきり出てます。
↑★天川村産レインボーガーネットのアップ。結晶は小さいですが虹彩がはっきり出ていてキレイです。
●グロッシュラー
名前は西洋スグリのグーズベリーから、木の実の色合いに似ているため名付けられました。
こちらも苦灰岩と花崗岩類のスカルンや蛇紋岩から産します。
基本は黄緑色ですが色のバラエティがとても多く、深緑色から鮮やかな赤、黄色を帯びることもあります。
特にクロムが原因で深い緑色になったものをツァボライト、黄色から褐色のものはヘソナイトの別名が付いてます。
色が付く要因には鉄、クロム、バナジウムがありますが、ガーネット特有の組成が変わりやすい性質も相まって様々な色を呈するようです。
●ウバロバイト
とても鮮やかなビリジャングリーンが特徴のガーネットです。
クロム鉄鉱中に皮膜状に産出しますが稀に12面体、24面体の結晶になります。
結晶がとても小さいので宝飾品として出回ることはあまりないです。
名前の由来は発見された当時のロシアの文部大臣で鉱物コレクターのS.S.Uvarov氏から。
カラーバリエーションも鉱物界では屈指の色幅を持つ上に、可愛らしい結晶の形をもつガーネットは熱狂的なマニアも存在するほど魅力的な石です。
宝石としても身近な存在と言えますが調べると他にない個性的な特徴が多くあり、鉱物の面白さを再認識させられます。
[参考]
・楽しい鉱物図鑑(堀秀道 著、草思社)
・株式会社 中央宝石研究所(CENTRAL GEM LABORATOLY Co., Ltd)ウェブサイト内、
宝石のエピソード GEMMY 136号、137号
・天然石がわかる本(上巻)天然石検定2級公式教科書
(飯田孝一 著、楽習フォーラム 刊)
・ジェムストーン天然石がわかる本(下巻)天然石検定1級公式教科書
(飯田孝一 著、楽習フォーラム 刊)
・KARATZ Gem Magazineウェブサイト内、「青いガーネットは幻?ベキリーブルーガーネットとは?」girigiri 著
2023.3.25
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